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協会の「指導、監査改善要求」の解説

  • 協会は09年4月の理事会で、指導、監査改善についての要求を決定した。
  • 現在行われている指導、監査の問題点を改め、健康保険法、行政手続法、個人情報保護法に基づき行われるよう、今後関係機関に働きかけを強めていく方針である。
  • 要求について本欄で数回に分けて解説する。

その6「監査は事実確認と行政措置に二分・再編」
その5「法的根拠がない自主返還」
その4「指導で患者調査はできない」
その3「集個の目的は医療費抑制」
その2「指導はイエロー、監査はレッドカード?」
その1「指導で監査が行われている」

協会の「指導、監査改善要求」とは


 「指導、監査改善要求」の解説⑥



監査は事実確認と行政措置に二分・再編

監査とは


 監査についての法的根拠は、健康保険法第78条にあるが、ここには監査という言葉は出てこない。似たような言葉で「検査させることができる」とあるが、検査=監査でもないようだ。すると監査とはどういうものか。監査要綱によると、指導と同様に「保険診療の質的向上及び適正化を図ることを目的とする」とし、「保険医療機関等の診療内容又は診療報酬の請求について、不正又は著しい不当が疑われる場合等において、的確に事実関係を把握し、公正かつ適切な措置を採ることを主眼とする」とされている。
 また厚生労働省の内部資料によると、監査について以下の5点が説明されている。①診療内容又は診療報酬請求について、不正又は著しい不当が疑われる保険医療機関等に対して、原則として、地方社会保険事務局(注:現在は地方厚生局)及び都道府県が実施するが、必要と認められる場合は厚生労働省も共同して実施。②監査実施前にレセプトによる書面審査を行うとともに、必要と認められる場合は、患者等に対する実地調査を行う。③監査後の措置としては、「取消」「戒告」「注意」がある。④保険医療機関等の指定や保険医等の登録が取り消され、5年を経過しないものについては、再指定、再登録を拒否することができる。⑤不正受給については、その額を返還させるほか、その額の40%の加算金を支払わせることができる。
 これらのことから考えると、監査とは、行政が質問検査権等一定の権限を行使して実施する一連の行為で、その結果、経済措置や行政措置を伴うものであると言うことができる。行政措置として最も重いものは、保険医療機関の指定及び保険医の登録取り消し処分であり、平成19年度には全国で医科21医療機関、歯科27医療機関が指定を取り消されている(別掲)

カルテ閲覧は監査Aで


 要求では、監査は届出後の適時調査や情報提供等によるものA(事実確認のため質問検査権の行使を必要とするもの)と行政処分を伴うものBに再編、整理する。実施に当たっては、まずAを実施し、Bの必要性が生じた場合、Bに移行する、としている。本シリーズで、指導の名のもとに実際はカルテ閲覧、患者調査、自主返還など監査と同じことが行われていることを再三指摘してきた。カルテの閲覧や患者調査等がどうしても必要な場合は、指導ではなく監査を実施すべきである。しかしその場合、いきなり行政処分を伴う監査ではなく、まず事実確認のための監査Aとして行う。例えば医療機関従業員からの内部告発や医療費通知による患者からの情報提供等に対しては、「診療報酬の請求方法、事務の取り扱いなどについて周知徹底する」とした指導で対応できるはずがない。事実確認を行う監査Aを実施し、その中で、不正や著しい不当が確認された場合は、次のステップである行政措置を含む監査Bに移行する。つまり監査をAとBの2段階に再編することを求めている。

適時調査は78条の検査


 ここでは便宜的に監査Aとしたが、既に同様のことが診療報酬の届出受理後の適時調査として実施されている。これは健康保険法73条の指導でなく健康保険法78条を根拠として検査が行われている。その内容は、届出を受理した保険医療機関については、適時調査を行い(原則として年1回、受理後6か月以内を目途)、届出の内容と異なる事情等がある場合には届出の受理の変更を行う、そして施設基準に適合しないことが判明し所要の指導の上なお改善が見られない場合は、届出は無効となり、その際には医療機関の開設者に弁明の機会を与えるというものである。要件を満たさなければ届出は無効となり、当然その間の届出に係わる診療報酬は返還が求められる。

法改正で5年に


 次に現行の監査要綱で一番問題となるのは、取り消し後5年間経過しないと再指定されないこと(前述厚生労働省資料の④)である。国民皆保険下のわが国では、保険医療機関、保険医の指定や登録が取り消されることは、即医療ができなくなることを意味する。従来は取り消し後、2年で再指定できたが、平成10年の法改正で5年に延長された。併せて診療報酬の不正請求にかかる加算金の割合が10%から40%に引き上げられた。健康保険法の運用と解釈によると、「これは安田病院事件等の悪質な不正請求事件が起こったことを背景として、保険医療機関の保険請求の一層の適正化を図るため、他法における指定制度の例の中で最も厳しいものと同期間としたものである」とされている。

安田病院事件とは


 それでは安田病院事件とはどういうものだったのか。平成9年3月に安田病院とその系列の大阪円生病院、大和川病院の3病院で医師、看護職員数水増しなどによる不正が発覚、大阪府への不正返還額は過去最高の24億7500万円に達した。この事件で安田基隆安田病院長ら3人が詐欺罪で起訴、3病院はいずれも保険医療機関の指定が取り消され、病院の開設許可も取り消された。この安田病院グループは、以前から職員による暴力事件や不審死をたびたび起こしていたが、府はなんら介入することなく定期的な立ち入り検査を形式的に行うのみで放置してきた。それには安田院長が自ら理事長を務める安田医学財団を通じて、府議や国会議員との政治家人脈を築いていたことが背景にあった。さらには知り合いの厚生省高官に働きかけ、立ち入り検査を回避するよう圧力をかけていた事実も明るみになった。

3年を限度に軽度は軽減


 安田病院の悪質性は、普通の医療機関では考えられない、度を越した異常、特異なもので犯罪といって良い。これは保険医の取り消し期間を2年から5年に延長したからといって、どうこうできるものではない。むしろ事件をこれまで見過ごしてきた行政の不作為こそが厳しく追求されるべきであった。
 要求では、保険医療機関の指定取り消し、保険医の登録取り消し処分は、ア.生命の保護や健康の増進に反することが明らかな診療、イ.保険財源の背任行為(自己の利益を目的に不正請求により保険財源に財産上の損害を与えるもの)に限定すること。また取り消し期間は、3年を限度とし、3ヶ月、6ヶ月、1年、2年の区分とする、としている。

処分撤回求め各地で訴訟


 いま監査で取り消しになった医療機関が、福島、栃木、山梨、静岡、奈良、兵庫、鳥取、高知など各地で、処分取り消しを求めて訴訟を起こしている。昨年は神戸地裁で、「取り消しを取り消す」という画期的な判決が出された(その後大阪高裁では逆転敗訴)。監査のあり方についても、はたして現状でよいのか真剣に考える必要がある。
 本シリーズは、今回で終了するが、要求はいまだ完全なものではない。会員各位の意見を踏まえ今後さらに内容を充実していきたいと考えているので引き続き忌憚のないご意見をお寄せいただきたい。(O)

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<資料>
健康保険法第78条
(保険医療機関又は保険薬局の報告等)
第78条 厚生労働大臣は、療養の給付に関して必要があると認めるときは、保険医療機関若しくは保険薬局若しくは保険医療機関若しくは保険薬局の開設者若しくは管理者、保険医、保険薬剤師その他の従業者であった者(以下この項において「開設者であった者等」という。)に対し報告若しくは診療録その他の帳簿書類の提出若しくは提示を命じ、保険医療機関若しくは保険薬局の開設者若しくは管理者、保険医、保険薬剤師その他の従業者(開設者であった者等を含む。)に対し出頭を求め、又は当該職員に関係者に対して質問させ、若しくは保険医療機関若しくは保険薬局について設備若しくは診療録、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2 第7条の38第2項及び第73条第2項の規定は前項の規定による質問又は検査について、第7条の38第3項の規定は前項の規定による権限について準用する。

(岐阜県保険医新聞2009年12月10日号)

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 「指導、監査改善要求」の解説⑤



法的根拠がない自主返還

指導後の措置として常態化


 個別指導が実施され、請求誤りや算定要件となるカルテ記載が不十分であったりすると自主返還を求められる。指導時に口頭で指摘事項と返還項目等が示され、後日書面で同事項等が通知される。例えば医科では「特定疾患療養管理料の算定日において、主病に関する管理内容の要点等の診療録記載がなく、管理料算定不可と判断される例が散見された。自主点検をして過誤調整の上管理料を返還すること」、歯科では「歯周基本治療後に歯周組織検査を行わずに補綴治療を行っている例が見られたので改めること」「点検を行い直近1年間に遡り自主返還すること」等(いずれも平成20年度の例)である。自主返還といっても、「返還すること」「自主返還すること」という文面からも明らかなように返還命令と変わらない。指導を受けた保険医のほとんどがこれに応じているのが現状である。

根拠は医療課長通知


 では自主返還には法的根拠があるのか。全くない。指導対象者が自発的に、誤った請求をしていたので患者さんにも保険者にも申し訳ないので返したいということはありうるが、行政の制度として運用され、行政指導である限り、行政手続法第32条第2項の「行政指導に従わなかったことを理由として不利益な取り扱いをしてはならない」とあるように、「自主返還」という名の経済的措置は、本来はありえないことである。
 前号で個別指導の根拠となる指導大綱は法律でなく、厚労省保険局長の定めた局長通知であることを述べた。個別指導時の自主返還に関する規定も同様で、指導大綱には規定がなく、指導大綱と同じ日付で発出された「指導大綱における保険医療機関等に対する指導の取扱いについて」と題する局長通知の一ランク下の厚生省保険局医療課長通知の4.経済上の措置についての項(資料1)で規定されている。行政機関内部の上級機関から下級機関への単なる命令に過ぎない。

本来は監査で行われるもの


 それでは支払った診療報酬を返還させることができるという規定は健康保険法には存在しないのか。いや、「不正利得の徴収等」を定めた第58条にその規定があり、療養の給付に関してはその第3項(資料2)が該当する。これはあくまで「偽りその他の不正の行為」いわゆる不正請求によって療養の給付に関する費用の支払いが行われた場合であって、支払った額に40%を乗じてそれを上乗せして返還させることができるとしている。不正ではなく不当であった場合は、健康保険法には特別の定めはなく、民法の不当利得の考え方が適用され、返還が求められる。「健康保険法の解釈と運用」(株式会社法研)によると、「第3項の規定による保険医療機関等の返還金および40%の加算金は、民法上の不当利得(第704条)の特別則として定められているものであり、同項の規定がなければ民法が適用になる私債権である」と解説されている。しかしこれらは、いずれも監査を行って、その結果生じる経済上の措置として行われる場合のことであって、「相手方の任意の協力によってのみ実現される」行政指導において適用されるものではない。

個別指導に監査の手法


 そもそも不当利得であれ不正利得であれ、監査で「的確な事実関係を把握」することによってしか確認できないはずなのに、現実には指導でカルテ等帳簿書類などを閲覧し正に監査と同じことをやっているから、自主返還が当然のことのように行なわれるのである。その意味で資料1の医療課長通知は、個別指導に監査の手法・考え方をそのまま持ち込んだものといえる。
 要求では、指導は行政手続法に則って実施するものであることを指導大綱に明記すること、指導と監査を峻別し、夫々の趣旨に基づき実施すること、自主返還という名の経済的措置は、実際は返還命令であり、そもそも行政指導では認められない、としている。(O)

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<資料1>
指導大綱における保険医療機関等に対する指導の取扱いについて
(平成7年12月22日保険発第164号)より
4.経済上の措置について

(1)都道府県は、個別指導において診療内容又は診療報酬の請求に関し不当な事項を確認したときは、当該保険医療機関等に対し事実の確認を行ったうえ自主点検を求める。自主点検の結果、指摘した事項と同様のものが確認されたときは、指摘した分と併せて自主返還を求める。

(2)都道府県は、当該保険医療機関等に対し(1)の取扱い、指摘事由等について十分説明する。

(3) (1)に定める自主返還の期間は、原則として指導月前の1年以上とする。

(4)自主返還については、該当する保険者に対し、保険医療機関等の名称、返還金額等必要な事項を通知し、当該保険者から支払基金等に当該保険医療機関等に支払うべき診療報酬から返還金額を控除するよう連絡させる方法による。

    なお、この取扱いにより難いときは、支払基金等から当該保険者に連絡させ、返還金相当額を当該保険医療機関から直接当該保険者に返還させる方法による。

(5)集団的個別指導にあっては、上記(1)から(4)までの取扱いは行わない。


<資料2>
健康保険法第58条第3項
(不正利得の徴収等)
 保険者は第63条第3項第1号に規定する保険医療機関(以下一部略)が偽りその他不正の行為によって療養の給付に関する費用の支払(以下一部略)を受けたときは、当該保険医療機関(以下一部略)に対し、その支払った額につき返還させるほか、その返還させる額に100分の40を乗じて得た額を支払わせることができる。

(岐阜県保険医新聞2009年11月10日号)

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 「指導、監査改善要求」の解説④



指導で患者調査はできない

指導大綱は局長通知


 指導大綱はそもそも法律ではなく、健康保険法に基づき指導の目的や方針、具体的な取り扱い等を厚労省保険局長が定め、担当する行政官庁に通知(通達ともいう)したものである。ちなみにインターネットのフリー百科事典・ウィキペディアによると、通達とは、「主に行政機関内部において、上級機関が下級機関に対し、指揮監督関係に基づき、その機関の所掌事務について示達するため発翰する一般的定めのことをいう。行政法学にいう行政立法中の行政規則として位置づけられる」とある。行政担当者はこの通知(通達)に基づいて日常の指導の業務を遂行している。
 行政が行う業務を全て法律で定めるわけにはいかないので、こうした通知・通達の必要性を否定するものではないが、問題は通知の内容が法律の趣旨に基づいているかどうかである。指導と監査は、法的根拠が全く異なるにもかかわらず、現実には指導に監査の手法が取り入れられ、監査と渾然一体となって実施されていることについては既に解説した(岐阜県保険医新聞2007年1月10日号)が、今回は患者調査に的を絞って考えてみた。

患者調査は監査のみ


 患者調査が行える根拠は、健康保険法第60条第2項(資料1)に法定化されている。しかしこれは、健康保険法第78条に基づく監査の場合のことである。監査は、不正や著しい不当が疑われる場合に行うので、本当に患者に診察や治療が行われたのかどうか調査する必要がある。そして監査の場で、患者調査の結果とカルテを照合し事実関係を把握する。このため患者調査にあたって、患者が報告に従わなかったり、答弁しなかったり、虚偽の答弁をしたときは、30万円以下の罰金が課される。つまり患者調査は、行政が一定の強制力を伴って行う監査でしか行うことができないのである。
 しかし指導大綱の第7指導後の措置等(資料2)の中で「患者から受療状況等の聴取が必要と考えられる場合は、速やかに患者調査を行い、その結果を基に当該保険医療機関等の再指導を行う」とされている。法律に基づかないことが、指導大綱に公然と盛り込まれ、何の疑いもなく行われているのは異常としか言いようがない。何故こんなことになってしまったのであろうか。医師、歯科医師は医療のことで手一杯で法律に疎いこともあげられるが、それよりも医師会、歯科医師会が現在の指導、監査行政のあり方を容認し、問題としてこなかったことが大きい。

「申し合わせ」は廃棄を


 指導問題に対する「厚生省と日医及び日歯の申し合わせ」(資料3)(以下「申し合わせ」という)は、今から50年ほど前の昭和35年に取り交わされ、今でも指導行政の指針とされ生きている。今回問題とした患者調査についても、「申し合わせ」の3で、「行政庁が個別指導を行った上なお必要がある場合は患者の実態調査を行うこと」とされ、これが指導大綱に反映したことは明白である。「申し合わせ」は、監査で自殺者が続出した時期には一定の役割を果たしたかもしれないが、いまやかえって桎梏となって保険医の権利侵害を引き起こしている。平成5年に行政手続法が制定され15年が経過している。今後は「申し合わせ」ではなく行政手続法を根拠に保険医の権利擁護の運動を進めていかねばならない。
 要求では、患者調査の法的根拠は健康保険法第60条第2項にあり、監査時に行えるもので指導ではできない、指導においても患者調査が行われるとした、「厚生省と日本医師会及び日本歯科医師会との申し合わせ」は廃棄する、としている。(O)

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<資料1>
■健康保険法第60条2項
 厚生労働大臣は、必要があると認めるときは、療養の給付又は入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費、家族療養費若しくは家族訪問看護療養費の支給を受けた被保険者又は被保険者であった者に対し、当該保険給付に係る診療、調剤又は第88条第1項に規定する指定訪問看護の内容に関し、報告を命じ、又は当該職員に質問させることができる。

<資料2>
指導大綱 (「第7 指導後の措置等」から抜粋)
1 指導後の措置
(2)個別指導
 ③ 再指導
 診療内容又は診療報酬の請求に関し、適切を欠く部分が認められ、再指導を行わなければ改善状況が判断できない場合
 なお、不正又は不当が疑われ、患者から受療状況等の聴取が必要と考えられる場合は、速やかに患者調査を行い、その結果を基に当該保険医療機関等の再指導を行う。患者調査の結果、不正又は著しい不当が明らかとなった場合は、再指導を行うことなく当該保険医療機関等に対して「監査要綱」に定めるところにより監査を行う。

<資料3>
厚生省と日本医師会及び日本歯科医師会との申し合わせ 〔昭和35年2月15日〕
 監査によって明らかになった事故を検討すると、その中には指導によって防止し得たものが多いと考えられるので次のように指導の徹底を期することとする。

1.医師会、歯科医師会は、その使命にもとづき、「社会保険医療担当者指導大綱」の方針に沿って自主的に会員の指導に努め、行政庁の行う指導と相まって、指導の徹底を期するものとし、その間相互に十分連絡を密にし、相協力するものとすること。

2.指導は、努めて個別指導を行うこととすること。ただし、指導を特に必要とするものについては、優先的に行うよう留意すること。

3.行政庁が個別指導を行った上なお必要がある場合は患者の実態調査を行うこと。

 この調査は、特に指導のために行うものであるから原則として、調査に現れた結果をもって直ちに監査対象とする扱いはしないものとすること。ただし特に不正の事実が明らかであると思われるものについては、更に調査の上必要に応じて適当な措置をとること。

4.本指導と監査の関連については、冒頭に述べた趣旨により、通常は指導を行ってもなお改善されないものについては監査を行うものとすること。


(岐阜県保険医新聞2009年10月10日号)

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 「指導、監査改善要求」の解説③



集個(集団的個別指導)の目的は医療費抑制


 集団的個別指導は、平成7年12月に新指導大綱が制定されたことに伴い指導の一形態として新設され、従来から行われていた集団指導、個別指導に加えて翌平成8年4月から実施された。診療所では診療科ごとの平均点数を算出し、その1.2倍以上で上位から8%の医療機関を対象に、レセプトに基づき、講義形式で全体指導を行った後に個別に面談方式で指導する。翌年高点数が持続すれば翌々年に個別指導が行われる。実施2年後に、不正等問題のある個別指導を優先することに変更され、集団的個別指導の個別面談部分は省略、当県を含めほとんどが集団部分のみ実施している。

高点数を認識させる


 新大綱等質問集(別掲)では、集団的個別指導の意義や取り扱いについて「教育的観点から指導を実施し、レセプト1件当たりの平均点数が高いことを認識させ、保険診療に対する理解を一層深めさせることを主眼として行う」「高点数に位置するからには、何らかの理由があるはずであり、被指導者からその要因を聴取したり、不必要な検査・投薬等に対する指導を行っていただきたい」と説明している。高点数に問題があり、高点数の医療機関は不必要な検査・投薬が必ずあるといわんばかりである。点数が高いか低いかは診療内容によって決まってくるものであり、高いから悪いということにはならない。にもかかわらず高点数を集団的個別指導の選定基準にし、さらに個別指導に連動させるというのは、指導本来の趣旨を逸脱し、明らかに医療費の抑制を目的にしている。

ある保険医の思い


 「診察をしつつ、この患者は何点になるかを考える医師は私の周りには先ずいない。懸命に苦しみを聞き、診療して、月末月初のレセプトを見て、はじめてこの患者がこのような点数になったのかと、気づくのがほとんどの医師ではなかろうか。それでは遅いのか。毎日毎日あなたはこれだけの点数でお引取りをとか、今月はもう点数オーバーです、来月までお待ち願います等といえるか。私達の後輩が続々と希望と誇りを持って医学部を卒業し、厳しい国試をパスして、なお研修し、医局でさらに学び、地域医療のためにと意気盛んに開業し、熱心に診療したあげくの果てに高点数で集まれと号令をかけられたとき、先輩はこんな先例を残してくれたのかと怒らないだろうか。」これは、平成8年の8月に集団的個別指導を受けた会員の保険医新聞への投稿から抜粋したものである。

歯科への影響はストレート


 あれからもう13年が経過しようとしている。各診療科の平均点数がこの13年間にどのように変化してきたのかにしてみた。内科(主として人工透析)を除いて軒並み下がっていることがわかる。平成7年度と20年度を比較してとくに下げ幅が大きかったのは精神神経科(33.8%)、耳鼻咽喉科(24.3%)、泌尿器科(21.3%)である。ただし医科についてはこの間、院外処方箋発行が増加しているのでその影響が大きく、また平成10年および平成14年以降連続してマイナス改定が行われている点も考慮されなければならないので、全てが集団的個別指導による影響とは言い難い。これに対し歯科は、マイナス改定による影響はあるものの、院外処方箋による影響が少ないため、よりストレートに平均点数の低下に影響を与えているといえる。1357点が1114点と243点、18%の引き下げとなっている。

集個は廃止に


 先日行われた東海北陸厚生局との懇談(6月25日)では、6県保険医協会の要求として、「集団的個別指導は高点数による選定をやめ、全員を対象に実施すること(6年毎の指定更新時に実施する等)」を要望したが、厚生局は、「対象者選定を恣意的にしないための基準が必要で、6年毎の指定更新時の実施は要望として聞く」と回答したのみで、高点数による選定の合理的根拠や効果については何も説明できなかった。前述したように集団的個別指導は発足後3年で個別面談が省略され、集団指導と何ら変わらないものとなり、ただ高点数が持続すれば個別指導が行われるという理不尽なしくみだけが残された。当協会は、東海北陸厚生局への要望からさらに一歩踏み込んで、高点数を選定基準とする集団的個別指導は廃止することを求めている。(O)

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■新大綱等質問集より抜粋
(平成8年3月22日厚生省保険局医療課医療指導監査室)

5.指導

(問34)集団的個別指導の意義は何か。
(答)集団的個別指導は、指導対象となる保険医療機関等に対して、教育的観点から指導を実施し、レセプト1件当たりの平均点数が高いことを認識させ、保険診療に対する理解を一層深めさせることを主眼として行うものである。
(問36)レセプトのみの集団的個別指導では、請求内容に関すること以上の指導は困難ではないか。
(答)集団的個別指導は、教育的観点から指導を実施し、レセプト1件当たりの平均点数が高いことを認識させ、保険診療に対する理解を一層深めさせる事を主眼としている。
 少数のレセプトであっても、指導対象医療機関が同グループの中で、高点数に位置するには、何らかの理由があるはずであり、被指導者からその要因を聴取したり、レセプト上の不必要な検査・投薬等に対する指導を行っていただきたい。


(岐阜県保険医新聞2009年9月10日号)

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 「指導、監査改善要求」の解説②



指導はイエロー、監査はレッドカード?


 昨年11月に厚生労働省保険局医療課の医療指導監査室長の三宅智氏が、全国自治体病院協議会の役員を対象にした研修会で「保険診療の理解のために」と題して講演した。その中で「指導というのはある意味イエローカードに当たります。監査というのはレッドカードになります。」「イエローカードの方の指導ですけれども、これは診療報酬の請求等に関して周知徹底することが大きな目的です。ただ、いろいろな形を取っておりまして、個別指導はカルテ等も見せていただいて、違反があるような場合はお金を返還していただくことがございます。」と述べている。現実にはこのように行われているので、至極当たり前のように受け止められる方も多いのではないかと思われる。しかし指導・監査行政のトップである三宅氏のこの発言は大変な問題を含んでいる。

はじめから被疑者扱い


 健康保険法第73条で保険医療機関および保険医は「厚生労働大臣の指導を受けなければならない」とされ、保険医であれば誰もが指導を受けなければならないことになっている。その指導をイエローカードというのは、保険医全員をはじめから疑ってかかっていることになるのである。こんな失礼な話があるだろうか。
 指導には集団指導、集団的個別指導、個別指導の3つの形態があり、三宅氏はとくに個別指導のことを念頭においていると思われるが、どの形態をとろうともこれらはすべて行政指導であり、前号で述べたように「任意の協力によって実現され」「指導に従わなかったことを理由として不利益な取り扱いを受けるものではない」ものである。指導大綱の中でも、指導の方針として、保険診療の取扱い、診療報酬の請求等に関する事項について周知徹底させることを主眼とし、懇切丁寧に行うとしている。
 そして三宅氏自身も「これは診療報酬の請求等に関して周知徹底することが大きな目的です」と述べているにもかかわらず、その後段で「個別指導はカルテ等も見せていただいて、違反があるような場合はお金を返還していただくことがございます」と続けている。個別指導に関しては、監査と同様、カルテの閲覧や返還金など監査と同様の手法を用いて行いますよ、と言い訳がましく公言している。

指導で白黒はつけられない


 指導は保険医全員が受けるものであるからそもそもイエローカードということはありえない。指導は、本来、白、黒をつけるのが目的ではない。白、黒をつけるのは監査の役割であり、別掲の監査要綱の監査方針にあるように「的確に事実関係を把握し、公正かつ適切な措置を採る」のである。つまり監査を実施して、カルテ等書類の照合や患者調査の結果を踏まえて総合的に判断することによって、イエローカードかレッドカードかがはっきりするのである。

監査は事実確認と行政処分に二分


 また監査だからといってレッドカードというのもおかしい、正確にはイエローカードまたはレッドカードの疑いがあるというだけである。監査を実施しても、注意、戒告の措置もあり、すべてが取り消しになるわけではない。ちなみに平成19年度の監査実施件数は、保険医療機関で医科59件、歯科41件である。そのうち取り消しとなったのは医科21件(35.5%)、歯科27件(65.8%)である。
 要求では、指導と監査を峻別し、夫々の趣旨に基づき実施することを求めている。また監査についても見直しを求め、監査は、届出後の適時調査や情報提供等によるものA(事実確認のため質問検査権の行使を必要とするもの)と行政処分を伴うものBに再編、整理する。実施に当たっては、まずAを実施し、Bの必要性が生じた場合、Bに移行する、としている。(O)

※三宅医療指導監査室長の講演資料「保険診療の理解のために」をご希望の方は協会までご連絡願います。

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■監査要綱より抜粋

第2 監査方針

  監査は、保険医療機関等の診療内容又は診療報酬の請求について、不正又は著しい不当が疑われる場合等において、的確に事実関係を把握し、公正かつ適切な措置を採ることを主眼とする。


(岐阜県保険医新聞2009年7月10日号)

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 「指導、監査改善要求」の解説①



指導で監査が行われている

実施3週間前に送付される個別指導実施通知。ここから個別指導当日まで落ち着かない日が続く
 個別指導においてはカルテの閲覧・検査が当たり前のこととして行われている。個別指導を受けて、例えば特定疾患療養管理料の管理内容の要点がカルテに記載されていないと、「自主点検をして過誤調整のうえ返還すること」と特定疾患療養管理料の点数の返還を求められる。こうしたことに法的根拠があるのだろうか。

指導と監査の違いは明確


 指導の根拠条文は、健康保険法第73条にあるが、「…厚生労働大臣の指導を受けなければならない」とされているだけで、カルテの閲覧・検査については特に法定されていない。これに対し監査の根拠となる健康保険法第78条では、「診療録その他の帳簿書類の提出若しくは提示を命じ、…設備若しくは診療録、帳簿書類その他の物件を検査させることができる」と法定されている。
 指導大綱の中でも、指導方針として「保険診療の取扱い、診療報酬の請求等に関する事項について周知徹底させることを主眼とし、懇切丁寧に行う」としている。これに対し監査要綱では、監査方針として「保険医療機関等の診療内容又は診療報酬の請求について、不正又は著しい不当が疑われる場合等において、的確に事実関係を把握し、公正かつ適正な措置を講ずること」とされている。

指導でできること


 保険診療における指導は、もちろん行政指導なのだから、行政手続法の行政指導の一般原則「行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によって実現されるものであること」「行政指導に従わなかったことを理由として不利益な取扱いをしてはならない」に則って実施されなければならない。また前述の指導方針からみても、指導でできることは、懇切丁寧に保険診療のしくみやルールついて説明し、レセプトを見て「この糖尿病の患者さんにはどのような指導が行われていますか、カルテに指導や管理の要点が記載されていますか、どういう内容が記載されていますか」と聞くぐらいまでが限度であろう。そして、最低これくらいのことはカルテに記載しておく必要がありますよと注意する位である。しかし現実には、行政はカルテを閲覧してルールどおり行われているかどうかの事実関係を把握して、カルテに記載がないのでこれは不当だと返還を命令する。これはもはや指導でなく監査そのものである。つまり指導の中で監査が行われているというのが今の実態である。

個人情報保護法にも抵触


 このことは、個人情報保護法からみても問題となる。個人情報保護法は、本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならないとしているが、例外として厚生労働大臣、都道府県知事等が行う報告命令等への対応は、本人の同意を得なくても良いとされている。医療法第25条及び第63条、薬事法69条、健康保険法第60条、第78条及び94条等がこれに該当する(医療・介護関連事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン)。つまり健康保険法第78条を根拠とする監査は、本人の同意は必要なく、同第73条の指導は、個別指導で診療録を提示することには本人の同意が必要となる。個別指導の場合の対象患者リストの通知は、この4月から4日前又は前日に行われることになったが、せめて2~3週間前に通知がなければ患者の同意を取り付けるのは物理的に無理である。今行われている個別指導でのカルテの閲覧・検査は、個人情報保護法にも抵触していることになる。  なお付け加えると、審査支払機関への診療報酬請求書・明細書等の提出は患者の同意が必要とはされていない。要求では、指導と監査を峻別し、個別指導はレセプトを基に実施し、カルテや帳簿書類、レントゲンフィルム等の検査はやめるよう求めている。(事務局・奥野)

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■健康保険法より抜粋

(厚生労働大臣の指導)

 第73条 保険医療機関及び保険薬局は療養の給付に関し、保険医及び保険薬剤師は健康保険の診療又は調剤に関し、厚生労働大臣の指導を受けなければならない。

(保険医療機関又は保険薬局の報告等)

 第78条 厚生労働大臣は、療養の給付に関して必要があると認めるときは、保険医療機関若しくは保険薬局若しくは保険医療機関若しくは保険薬局の開設者若しくは管理者、保険医、保険薬剤師その他の従業者であった者(以下この項において「開設者であった者等」という。)に対し報告若しくは診療録その他の帳簿書類の提出若しくは提示を命じ、保険医療機関若しくは保険薬局の開設者若しくは管理者、保険医、保険薬剤師その他の従業者(開設者であった者等を含む。)に対し出頭を求め、又は当該職員に関係者に対して質問させ、若しくは保険医療機関若しくは保険薬局について設備若しくは診療録、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。


(岐阜県保険医新聞2009年6月10日号)

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