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2024年度診療報酬改定

談話 「今次改定を私はこう考える」【医科】【歯科】
【医科】
 異常な物価高騰が続く下、本体財源が僅かプラス0.18%とは、事実上、医療の質の維持・向上に背を向けた改定と言わざるを得ない。本体財源の原資(1.13%)の大半0.89%は、医療従事者の賃上げ・ベア対応に使用されるが、一般産業平均水準への改善には程遠い。入院食の基準額引き上げ(プラス0.06%)に至っては、患者負担増である。

 特に診療所や中小病院が狙い撃ちされ、特定疾患療養管理料の対象疾患から糖尿病、高血圧症、脂質異常症(以下、3疾患)が除外される。医科診療所の再診回数に占める特定疾患療養管理料の算定回数割合は、内科で約7割と日常診療で大きなシェアを占めている。3疾患で特定疾患療養管理料(及び特定疾患処方管理加算)が算定できなくなり、内科系診療所を中心に月百万円単位規模での大幅な収入減となる。3疾患を除外する代わりに新設する生活習慣病管理料(Ⅱ)に移行を促すとしているが、患者の署名を得た療養計画書」策定はじめ、特定疾患療養管理料よりも高い算定要件のハードルが求められる。医師・医療従事者の長時間労働や働く環境がさらに悪化することが危惧される。

 入院医療については、高齢者の救急搬送先を急性期から締め出す方針であり、急性期7対1の平均在院日数が2日短縮され、医療等必要度「救急搬送後入院」の評価基準は5日から2日に変更、看護必要度の評価基準のうちB項目(「患者の状態」)は廃止される。急性期7対1を算定する中小病院(200床未満)の2割前後が基準を満たさなくなり、病院・患者ともども影響が大きい。

 また、初診料に「医療DX推進体制整備加算」を新設。在宅では「在宅医療DX情報活用加算」が新設される(訪問診療料Ⅰ・Ⅱ、在がん算定患者対象)。オンライン資格確認体制、オンライン請求実施前提であり、さらに今後の「電子処方箋、電子カルテ情報共有サービスを導入し、医療DXに対応する体制を確保している場合」を評価する。体制も確立していない段階から「整備」目的で点数化するなど、およそ療養の給付とは無縁であり、前代未聞のマイナ推進策にわずかな財源を振り分けた。補助金に加え診療報酬で医療機関をマイナ保険証推進に誘導するやり方は言語道断。医療機関に多大な負担を押し付ける「医療DX」推進加算は実施を撤回するべきである。

 保険医の生活と権利を守り、国民医療の向上をめざすため、当協会は引き続き訴えていきます。

(2024-4)


【歯科】
 2024年度の診療報酬改定は6月1日より実施される。2~5月は医療機やレセコンベンダー(業者)に過大な業務負担が生じるためとされている。但し、薬価改定は4月1日から実施されるので注意が必要である。2024年度の診療報酬改定率はプラス0.88%、薬価等がマイナス1.00%となり、全体でマイナス0.12%となった。歯科改定率はプラス0.57%となり、あとで述べる賃上げ対応分を除くと前回のプラス0.29%すら下回ると推測される。

 今回の改定では、医療従事者の賃上げ対応が設けられた。平均で1.2%を最低保証する内容であり、賃上げ原資の診療報酬の引き上げもわずかであり、又、報告等作成の複雑さはきわめて重要な問題である。

「今次改定の特徴について」

 口腔機能管理として「かかりつけ歯科医療機能強化型歯科診療所(か強診)」が廃止され、その内容を引き継いだ「口腔管理体制強化加算」として施設基準が新設された。従来の治療中心型から治療・管理・連携型(口腔機能の維持・向上)へのシフトを考慮している現れであると思われる。一方で保存修復、歯冠修復、欠損補綴に関する項目が点数評価されていないのは、一般歯科医院にとっては痛手である。

 また患者診療・医療連携において情報通信機器の使用推進が含まれる。新興感染症等が発生した場合として、基本診療料と医学管理において歯科オンライン診療の項目が新設された。歯科医療の質・安全の確保が期待される。

 マイナ保険証の活用を誘導する目的のような診療報酬での評価として「医療情報取得加算」「医療DX推進体制整備加算」などが新設された。対応困難な歯科医療機関が大多数であり、トラブルがあとを絶たない状況下で、医療機関に多大な負担と混乱が生じると予測される。

 歯科矯正に対する相談料が新設された。学校検診結果を踏まえ医科疾患に起因する咬合異常が対象の「歯科矯正相談料」の新設である。しかしながら、相談の結果、保険診療とどのように係れるかは不明である。

 歯科医療の役割評価として、「歯科外来診療感染対策加算」「歯科診療特別対応加算3」が新設された。認知症患者対応として「総合医療管理加算」の対象患者として認知症患者が追加された。

 医科歯科連携はきわめて重要であり、評価したい。但し、今回の改定の特徴として、「加算」の新設が多い。「加算」は本体の点数がなければ算定できないのが道理である。領収書・明細書を見た患者から説明を求められ、理解を得る必要がある。

 総括として、今回の診療報酬改定はきわめて複雑であり、運用面で困難を感じざるを得ない。医療の根本は国民が安心して医療を受けられる仕組み作りが大切なのであって、制度の複雑性によって医療者が困惑し、かつ運用できかねない改定はあってはならないと思われる。

(2024-4)