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保険医新聞7月号主張

さらなる子ども医療費助成制度の充実を求めよう
 岐阜県ではすべての自治体において義務教育終了までの乳幼児医療費助成事業が実施されています。これは長年の岐阜協会の運動の成果です。その中でもとりわけ岐阜県大垣市の政策には目を見張るものがあり全国から注目されています。

 大垣市は「子育て日本一プロジェクト」を掲げ、平成24年度から「子ども医療費支給事業」として助成対象を高校生世代までの入院、外来医療費まで拡大しました。特徴は現物給付、所得制限なし、一部負担金なしであり、また福祉医療費助成金の支払いは国保連合会が請け負っているため医療機関や市町村は煩雑な実務から解放されています。この制度が発足し5年経過した段階で大垣市から公表されたデータによりますと、出生率が岐阜県平均や全国平均よりも毎年確実に高くなっています。「子ども医療費支給事業」の前後において、実際に受診した患者数や、必要とした医療費はほとんど変わっていないことが証明されています。このことは大変重要な事実で、子どもの医療費窓口負担を軽減している自治体に対する国民健康保険の国庫負担金減額調整(以下、ペナルティ)の根拠としている「窓口負担を軽減すると安易な受診が増え、医療費の増加を招く」という理由がまったく根拠のないものであることがはっきりわかります。

 また未就学児までを対象にペナルティを廃止することを表明した平成28年12月12日付けの厚労省通知において記載された「見直しにより生じた財源については、各自治体において、更なる医療費助成の拡大ではなく他の少子化対策の拡充に充てることを求める」という内容がまったく的外れであることがわかり、子ども医療費助成制度の充実こそが出生率の向上につながるという重要な事実を直視すべきであります。大垣市がパイオニアとなり現在では岐阜県下の4分の1にあたる11市町村が高校生までの子ども医療費助成を行っています。

 岐阜協会では自治体キャラバンなどを通じまして、この制度を県下全域に広げたいと考えています。また大垣市でも実現していない「入院時の食事療養標準負担額」の助成(白川町のみが実施)についても実現を目指して取り組む必要があります。われわれ岐阜協会は保団連とともに中央要請行動において国会議員に「国の子ども医療費無料制度を創設し、減額調整(ペナルティ)の完全廃止を求めます」という要請を行っており、全国にこの運動が広がるように粘り強く頑張っていきます。

(2017-07)



子ども医療費助成は自治体の“やる気”次第


 上記「主張」で述べている通り、大垣市が子ども医療費助成制度を高校生世代にまで拡大して6年目になる。全国的にも注目され「なぜ大垣市ではやれたのか」と問われることも多い。
 大垣市は2014年度の数字で、歳入約601億円、歳出約578億円で、財政力指数は0.91(県内で2位、全国で149位)である。同じく2014年度、子ども医療費助成に要した扶助費は約8億5000万円で歳入比で1.4%に過ぎない。大垣市の18歳以下の人口は2万7千人弱、その内高校生世代は約4300人(約16%)で、この高校生世代に要した扶助費は約1億円(約12%)である。
 国の集計資料等により、大垣市が小学生までと中学生の入院のみ助成していた2007年と高校生世代まで助成をしている2015年の大垣市の財政状況を比較すると、歳入は540億円から624億円に増えている(116%)。その間、生活保護や各種制度に必要な扶助費総額は78億円から120億円(153%)への増である。その内、子ども医療費への扶助費は6億6000万円から8億6000万円(130%)に。歳入84億円増に対して子ども医療費助成は2億円増に過ぎない。
 確かに大垣市は財政的には黒字で余裕がある自治体のようだが、扶助費関係の支出は他の類似都市(人口や産業構造が同じ都市)と比べてそう多くはない。住民一人当たりの扶助費支出は、大垣市は7万3733円に対し、類似都市は7万2192円である。 子ども医療費助成は、負担はそう大きくないので、財政が健全であればやるかやらないかは自治体のやる気次第である。
 大垣市は、子ども医療費助成の拡充によって①出生率が県平均、全国平均より高い(別表参照、27年度は県平均が高い)、②大垣市に続き、他市町が助成対象年齢を引き上げている、とその効果を認めている。やる気を出せば効果は得られる。協会は主張で述べている通り、医療費助成拡充に取り組んでいく。