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保険医新聞9月号主張

「骨太の方針2020」に抗議します
  コロナ禍を教訓に医療費抑制政策の撤回を
 2020年の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)が7月17日に閣議決定されました。30年以上に及ぶ医療・社会保障費抑制の下で弱体化された医療・社会保障の深刻な状況が、新型コロナウイルス感染拡大を通じて改めて明らかになったにもかわらず、引き続き患者・利用者負担増を進める「骨太の方針」2018・2019を着実に進めるとしています。医療費抑制政策を念頭に医療供給体制の再編・構築を図ろうとしていることは極めて重大です。

 緊急を要する医療機関への経営支援策について、「医療機関・薬局の経営状況等も把握し、必要な対応を検討し、実施する」としていますが、具体策は明記されていません。当協会のアンケートから明らかなように、受診控えなどにより四月の保険診療収入(支払基金)は診療所で20%減、半減近い診療科もあり、5月以降も厳しい状況が続いています。患者の疾病・健康状態の悪化が危惧されます。コロナ治療と平時医療の確保に向けて、政府は感染防護具等の迅速な供給に努め、患者・国民に必要な受診を促し、減収額に応じた医療機関への診療報酬の概算払いなど実効性のある財政措置を講じるべきです。

 コロナ禍は、平時より余裕のある医療供給体制が必要なことを浮き彫りにしました。医療従事者の協力や病床・医療機器の利用等を「調整する仕組み」の構築、「感染症への対応の視点」による地域医療構想の手直しなどに留めず、急性期病床等の削減や病院の再編・統合は直ちに中止し、保健所の増員も含め、これまでの医療従事者養成のあり方を抜本的に問い直すべきです。「診察から薬剤受取までオンライン(診療)で完結する仕組み」の構築や、「一般用医薬品等の普及などによるセルフメディケーションを推進」などが示されています。あくまで、医療は対面診療を基本とすべきであり、オンライン診療やスイッチOTC化などについては明確なエビデンスに基づき、医療の質・安全、安心が十分に担保されることが不可欠です。初診からのオンライン診療については医療事故の増加が強く危惧されるなど、恒久化すべきではありません。

 政府は、医療費抑制政策を撤回し、医療・社会保障の充実による所得再分配機能の強化、安定した正規雇用を基本に据えた環境整備、応能負担を徹底した税財政など、誰もが安心して暮らせる社会に向けて抜本的な政策転換を図るべきです。

(2020-09)