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保険医新聞5月号主張

コロナ禍の1年を振り返って
病院統廃合の中止、保健所の増設、減収補填、検査料の増額を求める
 新型コロナウイルス(SARS―CoV―2)が発見され、我が国で流行しはじめてはや1年半が経過しようとしている。しかし医療提供体制は未だに安定せず混乱(医療崩壊)を招いている。日本は世界一の病床大国で、人口千人当たりの病床数は13.1でOECD加盟国平均4.7の2.8倍に達し、感染者数も諸外国に比べ圧倒的に少ない。それなのに医療崩壊と叫ばれている。その要因の一つとして、コロナ入院患者を受け入れてきた医療機関は主に国公立・公的医療機関(感染症病床、感染症指定医療機関)であり、民間は1割にすぎず日本の病床数全体の0.1%にすぎない。これは、病院統廃合による、急性期病床の圧倒的不足、感染症病床の準備不足が原因である。国はただちに病院統廃合をやめ、その地域に見合った感染症病床を増床すべきである。また保健所法改正による保健所半減も大きく関与している。感染症病床と地域保健所の増設は並行しておこなわないと、保健所業務はひっ迫するのは、みてわかるとおりであり、ただちに保健所の増設を行うべきである。

 そして、コロナ禍における受診抑制が病院・診療所の経営を圧迫している。当協会で2月に行った「医療機関への影響調査」では、昨年同時期より医科診療所約85%・歯科診療所約60%が患者数と収入が減ったと回答、2回目の緊急事態宣言の前後では、医科歯科とも約80%の医療機関で収入が減少したと回答があった。これは患者の生命を脅かすこととなるにもかかわらず、政府は医療だけ優遇するわけにはいかないといって、GoToキャンペーンなどで経済を回そうとした結果、第二波、三波を招いて、医療機関の混乱と疲弊を助長した。まずは、医療機関の経営安定を行うべきである。保険医協会は、今までどおりコロナ禍で生じた減収補填を主張しつづける。

 さらに、国は医療従事者慰労金、感染症防止対策補助金、診療・検査医療機関補助金を創設したが、申告が複雑であり、行政業務のひっ迫により未だに支給されていない医療機関が多数ある。この補助金が遅れることによっても医療機関の経営がひっ迫している。補助金の速やかな支給と申告業務の簡素化、補助金以外の補填すなわち減収補填を強く求める。併せて、診療・検査医療機関は、診察の煩雑さ・スタッフの確保・風評被害による患者の減少などにより経営が悪化している。「影響調査」において、コロナ検査料・判断料の増額を求める意見、長期処方によるレセプト枚数の減少・収益減が続いており、長期処方に対して点数増を望む声が多くあった。

 さらにワクチン、治療薬の有効性、安全性の検証と速やかな供給体制を明らかにして構築することを強く望む。併せて医療・福祉・介護関係者に対する誹謗中傷、風評被害の防止を行うことを強く求める。医療に求められる役割は、疾病の早期発見・診断・治療であり、コロナ禍で生活困難が拡大する中での窓口負担増は受診抑制を深刻化させ、この役割をことごとく不可能にする。医療者の立場から患者負担増に強く反対する。

(2021-5)